はじめに
- Shopifyで自社独自のポイント制度を作りたい
- 既製のポイントアプリを試したが、やりたい運用に合わない
- ポイントの開発を頼む前に、何を決めておけばいいか知りたい
このような方のための記事です。
この記事では、Shopifyで独自ポイントを作る方法を、既製アプリで足りる場合と開発が要る場合に分けて解説します。
RYXはShopifyアプリを自分で6本つくっていて、そのうち1本が日本のお店向けのポイントアプリRYX Pointsです。いまApp Storeの審査を受けています。ほかの制作会社で断られた独自ポイントの開発を引き受けて納品したこともあり、そこで詰まった点も交えて書きます。
Shopifyの標準機能にポイントは無い
Shopifyには、購入金額に応じてポイントが貯まり、次の買い物で使える標準機能がありません。ポイントに近いものとして使えるのは次の3つです。
- ストアクレジット: 管理画面からお客様に残高を付与し、チェックアウトで支払いに充ててもらえます。期限は付与ごとに付けられます。
- 顧客セグメントを絞った割引: 割引コードも自動割引も、使えるお客様を特定のセグメントに絞れます。会員ランク別の割引ならこれで作れます。
- 顧客タグとメタフィールド: 会員ランクや累計の購入額をお客様ごとに持たせられます。
外部記事help.shopify.com/en/manual/customers/store-credithelp.shopify.com
外部記事help.shopify.com/en/manual/discounts/discount-types/percentage-fixed-amounthelp.shopify.com
ただしストアクレジットには「残高を全額でしか使えない」「従来のお客様アカウントでは使えない」という制約があります。従来のお客様アカウントは2026年2月に非推奨になっているので、移行の状況も合わせて確かめてください。詳しくは従来のお客様アカウントの移行の記事にまとめています。注文から自動でポイントを付与する仕組みも標準にはありません。ポイント制度として回すには、アプリか開発が要ります。


既製のポイントアプリでできること・できないこと
2026年10月に、日本で使われているポイントアプリを31本比べました。付与率・会員ランク・誕生日ポイント・有効期限といった基本は、主要なアプリならたいてい持っています。差が出るのは、ポイントをどう使わせるかと、何の数で課金するかの2点です。

日本製のアプリは、カートでポイントを使い捨ての割引コードに換える方式が大半でした。レビューで一番多い不満も「クーポンと併用できない」です。Plusでない店がチェックアウトの中で直接ポイントを使えるのは、ストアクレジット方式か、Functionsの割引で使う一部のアプリだけでした。
課金は、会員数で数えるアプリと注文数で数えるアプリに分かれます。会員数で数えるアプリは、ほかのカートから移行して会員が一気に増えた時点で料金が上がります。
既製アプリで足りなくなるのは、だいたい次の場面です。
- 一部の商品だけ返品されたとき、使ったポイントと付与したポイントを商品の分だけ戻したい
- 有効期限を自社の決まりに合わせたい
- 外部の会員基盤やほかの事業のポイントと残高を共有したい
- 会員ランクを毎年リセットするなど、ランクの決まりが独自
- ポイントの表示を自社のデザインに合わせたい
ある大きな案件では、既存のポイントアプリから一番要件に近いものを選び、足りない部分を運用でしのぐ形に妥協しました。それがきっかけで、ポイントのアプリを自分で開発しています。
独自ポイントを開発するときの仕組み
独自ポイントの中心は、アプリが持つ台帳です。Shopifyの中にはポイントの残高を置く専用の場所が無いので、付与・利用・返還・失効の履歴をアプリのデータベースに積み、残高はそこから計算します。

利用の部分は、ShopifyのDiscount Functionを使うと割引コードを発行せずに作れます。Discount Functionはチェックアウトの中で動く割引の計算で、カートの属性とお客様のメタフィールドを入力として読めます。お客様がカートで入れた使う量をカートの属性に入れ、Functionが顧客メタフィールドの残高と照らして割引にします。
Functionは外部のサーバーに残高を聞きに行けません。外部と通信できるFunctionは、Shopifyのenterprise向けのプランに限られています。そのため残高はアプリが顧客メタフィールドに写しておき、注文や返品のたびに書き戻します。
RYX Pointsを作ったときは、同じお客様が別々のカートでほぼ同時に購入手続きを確定させると、どちらも書き戻す前の残高で割引になりました。購入手続きの時点でこれを止める手段は無いので、台帳に不足として記録する作りにしています。
表示は、商品ページやカートにはテーマアプリ拡張、マイページには新しいお客様アカウントの拡張で出します。
ストアがShopify Plusかどうかで作り方が変わる
独自ポイントの相談で最初に確かめるのが、ストアのプランです。Shopifyの公式ドキュメントには、Functionを含むカスタムアプリはShopify Plusのストアでしか使えないと書かれています。App Storeの公開アプリに入ったFunctionなら、どのプランでも使えます。
開発ストアではカスタムアプリのFunctionも動くので、テストでは通ったのに本番のストアで割引が効かない、という形で気づくことになります。

Plusでない店でカスタムアプリを作るなら、ポイントの使わせ方は割引コードかストアクレジットになります。割引コードの場合は、アプリがその注文だけに使えるコードを作ってカートに当てます。ストアクレジットの場合は、Admin APIの storeCreditAccountCredit でアプリから付与できますが、使う量を選べない制約は残ります。
費用と期間の考え方
独自ポイントの開発費は、画面の数より、つなぐ相手と例外の数で決まります。見積もりが大きく動くのは次の点です。
- 外部の会員基盤やPOSと残高をやりとりするか
- 一部返品・キャンセル・注文の編集を、どこまで自動で戻すか
- 今のポイント残高を移行するか
- 管理画面で店舗の方が操作する画面をどこまで作るか
Shopifyのポイント開発に絞って公開されている相場は、調べた範囲では見つかりませんでした。上の4点をそろえたうえで、複数の見積もりを比べてください。カスタムアプリ全般の費用の決まり方はShopifyのカスタムアプリ開発の費用にまとめています。見積書で見るべき点はShopify制作会社の選び方に書いています。
開発費のほかに、毎月かかるものがあります。
- サーバーとデータベース: アプリの台帳を置く場所です。
- ShopifyのAPIの更新への追従: Shopifyは3か月ごとにAPIの新しい版を出し、各版の対応は最低12か月です。放っておくと古い版が使えなくなります。
- Plusにする場合のプラン料金: 1年契約で月398,000円からです。
期間を左右するのも、つなぐ相手と例外の数です。外部の会員基盤とつなぐ場合は、相手側のAPIの仕様がそろうまで進められない部分が出ます。公開アプリとして作る場合は、App Storeの審査の待ちも入ります。RYX Pointsは10月10日に申請し、差し戻しを1回直して、いまも審査中です。
発注前に決めておくこと
見積もりの前に次の8つが決まっていると、金額と期間がぶれません。

なかでも後から変えにくいのが、返品と送料無料ラインの扱いです。Shopifyの送料は割引を引いた後の金額で判定されるので、ポイントを使って送料無料ラインを下回ると送料がかかります。今のサイトと同じ挙動でよいかを先に決めておいてください。
外部記事help.shopify.com/en/manual/fulfillment/setup/shipping-rates/troubleshootinghelp.shopify.com
会員ランクを毎年リセットするなら、その操作も開発の範囲に入ります。会員ランクの年次リセットは、管理画面のボタンで全顧客のランクを戻すアプリを作って納品したことがあります。
ポイントを販売する予定があるなら、資金決済法も確かめてください。日本資金決済業協会のQ&Aでは、購入実績に応じて無償で付与するポイントは前払式支払手段にあたらない一方、お金を受け取って発行するポイントは原則としてあたるとされています。無償分と有償分を分けて表示・管理できないと、無償分も対象に含まれます。
外部記事前払式支払手段についてよくあるご質問|一般社団法人日本資金決済業協会一般社団法人日本資金決済業協会の前払式支払手段についてよくあるご質問ですs-kessai.jp
納品後の保守も、見積もりの時点で範囲と月額を決めておくと、APIの更新や不具合のときに慌てずに済みます。
さいごに
Shopifyにはポイントの標準機能が無く、まずは既製アプリで足りるかを確かめるのが近道です。足りない場合は、ストアがPlusかどうかで作り方が変わり、費用はつなぐ相手と例外の数で決まります。
RYXでは、既製アプリで足りるかの見極めから、独自ポイントの設計・開発・納品後の保守までお受けしています。お問い合わせからお気軽にご相談ください。

